独立の計画が全然うまく進まない!試行錯誤の中で見つけたお花屋さんのこだわりの軸とは

記念すべき初回記事は、「花のあるくらし研究所」の中村将史さんに取材させていただきました。13年間勤めたお花屋さんから独立した中村さん、独立当初の計画がほとんどひっくり返ってしまった失敗談を取材させていただきました! – ナナコロ編集者 わか

はじめは些細なきっかけで花屋の道へ

まずは、お花に携わるお仕事をするようになったきっかけを教えて下さい。

もともとのきっかけは、学生時代にアルバイトとして働きはじめた経験でした。当時居酒屋やカメラ販売員のアルバイト等わりと幅広い仕事をしていましたが、その中でも特に心惹かれたのが花屋の仕事でした。

はじめは面白そうとかかっこいいとか些細な動機ではじめましたね。ただ仕事をする中で、勤め先の社長の人柄や仕事観に魅了されながら仕事に対する気持ちも強まっていき、結果的にその花屋に入社してから昨年2020年まで13年間働いていました。

いつもの通り道にあった花屋で働くことに


具体的にはどんな仕事をされていましたか?

フラワーギフトの製作・販売や催事でのフラワーコーディネートです。勤めていた会社は品質にこだわる会社だったので、なにか技術を身に着けたいと思っていた自分にとってありがたい環境でしたね。


長く勤められた職場を辞めて、独立したいと思うようになったきっかけはありますか?

具体的なきっかけがあったというよりも、徐々に独立を考えるようになっていった感じです。社長の付き添いで異業種交流会などに参加し、そこで出会った経営者や自営業者の方に独立の予定を聞かれることが多かったため、独立することが身近に感じられるような環境にはいたかもしれませんね。


会社員からの独立、不安はありませんでしたか?

正直、不安な気持ちはありませんでした。自信があったというよりも単純に楽観的だっただけかもしれませんが。不安になるほど考えてなかったのかもしれないし、やればなんとかなるだろうという気持ちが強かったので(笑)

奥様に独立の話をした時は不安そうなリアクションをされたそう(笑)

順調に進むはずの計画がほとんど変更に

そこから独立に向けて開業準備が始まったわけですね。計画通りに進まなかったことはありましたか

もちろんありました。というか、ほとんどの計画が変わってしまったような状況でした(笑)
というのも、今の内装は当初予定していたものとは全く違うものなんですよ。それに予定していた開店スケジュールも大幅に変わっていますね。もともと2020年11月にオープンしようと思っていたのが最終的には2021年3月になってしまったので(笑)

あとはお店の場所も変わったし、実は「花のあるくらし研究所」という名前すら計画時から変わっています。そう思うと、計画の実行って意味ではすごく失敗しているかもしれないなぁ(笑)


たしかに、随分と大きな変更ですね…(笑)どうして計画通りに進まなかったんでしょうか?

なにか大きなトラブルがあったというわけではないんですが、いろいろと行き当りばったりで進めてしまっていたんですよね。

例えば、お店の内装はもともと古民家風のもので考えていたんですが、壁を張り替えようとしたら中からコンクリートの壁が出てきたんですよ。

それをみてシンプルモダンな感じも良いかということで思い切ってテイストを変えることにしました。古民家風のために梁などの素材まで用意していたんですけど、そのあたりはまだ活用できていないですね(笑)

ただ、頂いた素晴らしい素材ではあるので、どこかのタイミングで別の形でお店作りに活かしたいと考えています。

すごい柔軟性ですね(笑)臨機応変っていうことですね!

そうそう!臨機応変です、いい言葉ですね(笑)

開店スケジュールのほうは、借りる予定だった物件が使えなくなってしまったり、今の物件が決まった後も諸工事が間に合わなかったりで、どんどん後ろ倒しになってしまいましたね。

色々と調整していく中で、店の方向性がわからなくなって迷子になりかけたこともあります。今振り返ってみれば、ほんとに計画白紙って言えるくらいミスだらけですね(笑)

「ぜんぜん計画通りに進まない!」


初期の計画としては実現できなかった部分も多いと思いますが、やり直したいと思うことはありますか?

実はそれがないんですよね。今となっては、巡り巡って「この名前のこのお店にたどり着いてよかった」という気持ちが強いです。

試行錯誤を繰り返して行ったり来たりした部分もありましたが、一周まわって当初のコンセプトに沿ったお店づくりをすることができたので、最終的には理想のお店になっていると満足しています。

試行錯誤の中で見つけた、こだわりの軸

理想のお店を実現できた秘訣はなんだと思いますか?

お店の核となるコンセプトをしっかりと固められたから。この一言に尽きますね。

自分が独立してやりたかったことは、花のある暮らしを広めることでした。そのためには、ただ花を売るだけでなく、花のことを学べる機会を提供したいと思っていました。今も開催しているワークショップがその例ですね。

素敵なコンセプトですね!独立を決めたときからこだわっていたのでしょうか

いえ、実は独立計画の初期は、まだこの考えを言語化できていませんでした。

もちろん花のある暮らしを広めたいという気持ちは持っていましたが、それはあくまで漠然と考えているだけで、「いかにお店づくりに反映させるか」という発想はありませんでした。

そんな中、知り合いで静岡マーケティングサロンを主宰している山﨑啓輔さんに、独立計画を聞いてもらいながらよく意見をもらっていたのですが、いつの間にか「当たり障りのないお店」になってしまっていることに気付かされたんですよね。

当たり障りのないお店ですか?

はい。例えば、仮決めしていた店名が「それっぽいけど意味が伝わらない横文字を並べただけのもの」であったり、内装のデザインが変更されていく中で、結局よくある無難なものになっていたり、つまり花のある暮らしを広めることに繋がらないような「当たり障りのないお店」を作ってしまっていたんです。

なるほど、それは鋭い指摘ですね

はい。それから軸が定まるまでは、ひたすら壁打ちさせていただきながら自分の思想を言語化していったので気持ち的にはかなり大変でした(笑)ただ、自分が独立するにあたって大切にすべきことが明確になりましたし、そうして生まれたのが「花のあるくらし研究所」という名前であり、今現在のお店なんです。

その軸が定まってからは、お店づくりが進めやすくなりましたね。

大切なコンセプトから生まれた「花のあるくらし研究所」


軸を定める前後で、体的にどんなことが変わりましたか?

一つは、意思決定の基準ができたことで物事を決めやすくなりました。お店の名前もダイレクトに伝わる名前に変わりましたし、お店のレイアウトもワークショップ等を開催しやすい形にしています。お店を通してやることの目的が明確なので、やるべきことがわかりやすくなりましたね。

もう一つは、失敗しやすくなった部分があると思います。

失敗ですか?

はい。こだわりたい軸が決まってからはそれ沿った判断を心がけるようになりましたが、逆に言えばこだわる軸をきちんと守れていれば多少の失敗があっても大丈夫、と思えるようになりました。

はじめてやることが最初から全てうまくいくことはないですし、やってみて初めてわかることばかりじゃないですか。だからいろいろな面で試行錯誤を繰り返すことになるんですが、たいてい色々試しているうちによくわからない方向にいってしまうんですよね。そうなると不安だし、しんどいです(笑)

ただ、立ち戻れる軸があれば支離滅裂にならなくてすみますし、筋が通ったチャレンジをしていけるように思います。それが失敗しても大丈夫と思える理由ですね。

目的が明確に定まっていれば、失敗を怖がらずに挑戦できるというのは勇気が持てるお話ですね

そうですね。これからも「花のあるくらし」を広めていくために試行錯誤しながらやっていきたいとおもいます。

本日は素敵なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました

花のあるくらし研究所: https://hanano-ken.com/

「花のあるくらし研究所」では、お花を毎日受け取れる「研究生」の募集も行っています。研究生限定のワークショップなども開催されているそうなので気になる方は下記URLからチェックしてみてください!

花のあるくらし、研究生
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